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ネタバレあり【コンビニ人間(村田沙耶香)】を読んだコンビニで6年バイトした人の感想

書籍

こんにちは

ワニイルカです

kindleを整理していたら今年の夏に読んだ「コンビニ人間」が出てきました。

村田沙耶香さんの芥川受賞作です、話題になりましたよね。

 

コンビニ人間

コンビニ人間

 

 

読書が苦手な僕が1日で読み終えたほど、読みやすくて内容の濃い本だったので感想を記事にしたくなりました。

 

 

 

 あらすじ

 

アマゾンより抜粋。

第155回(2016年上半期)芥川賞受賞作36歳未婚女性、古倉恵子。

大学卒業後も就職せず、コンビニのバイトは18年目。これまで彼氏なし。

オープン当初からスマイルマート日色駅前店で働き続け、変わりゆくメンバーを見送りながら、店長は8人目だ。

日々食べるのはコンビニ食、夢の中でもコンビニのレジを打ち、清潔なコンビニの風景と「いらっしゃいませ!」の掛け声が、毎日の安らかな眠りをもたらしてくれる。

仕事も家庭もある同窓生たちからどんなに不思議がられても、完璧なマニュアルの存在するコンビニこそが、私を世界の正常な「部品」にしてくれる――。

 

ある日、婚活目的の新入り男性、白羽がやってきて、そんなコンビニ的生き方は「恥ずかしくないのか」とつきつけられるが……。

現代の実存を問い、正常と異常の境目がゆらぐ衝撃のリアリズム小説。

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社会によりそえば自分が崩れて 逆もまたそのしかり...

コンビニ店員として生きる主人公・恵子はそんな自分の在り方に葛藤する。

 

そんな中、コンビニに結婚相手を求めに来た新入り・白羽がやってきて2人は互いの利害が一致したため同棲をしはじめるというまさかの展開。

 

白羽にうながされて恵子はスーツを装着し就活に挑むけど...

コンビニ人間として最後までブレない恵子の姿にたくさん考えさせられる物語。

 

 

コンビニ人間を読むきっかけ

昼下がりになんとなーく近くのコンビニに立ち寄った時に発見したのがコンビニ人間だった。まずそのタイトルに強く惹かれた。なぜなら僕は6年間コンビニでバイトをしてきたし、その日は長かったコンビニバイト生活に終止符を打って間もなかったから。

 

短期記憶の弱い僕でもメモなしでタイトルを覚えたまま家に帰ることができた。

 

 

コンビニ人間の感想 

 コンビニ18年...環境の変化がこわいとかいうレベルじゃなかった

 あらすじにもある通り、主人公は同じ店舗で18年もの歳月を過ごした。信じられない。僕は6年コンビニをやったと言ったが3店舗まわった。

 

たいていどのコンビニにも長く続けている主婦層の女性がいた。彼女たちは「他の仕事しようかな〜」と言いつつもタウンワークを開く気配すらない。

誰かが辞めると言うと、次の職場の人間関係や待遇を心配していた。

そうだ、なんだかんだいってみんな環境の変化がこわいんだ。僕も何度もやめようと思った店舗に結局長いこと留まっていたこともあった。

 

この本に出てくる主人公はどうだ、あらすじだけを読んで

「この主人公もいつかやめようとずるずる引き延ばして今に至るんだろうな...」と思っていた。

 

だけど、この人にはそもそもやめたいと思っていた気配もないし、毎日同じことの繰り返しで洗脳されたわけではなくて、もともとコンビニ店員としての"型"があった。

 

環境の変化がこわくてやめられなかったんじゃなくて、そこで働くことに完全に意味を見出していた...なんならコンビニ店員であることからアイデンティティを得ていた...

 

そんなスタッフに僕は出会ったことがなかった、だから一気に読むことができた。

 

 

社会とつながる感覚には共感

コンビニの店員であることになんの誇りもなかったけど、「社会とつながっている」という主人公の感覚には、おこがましくも少し共感できた。

毎日100人以上を接客をしたけど一人一人の顔は覚えていないし、僕じゃないとできない仕事でもない。

でも、替えの利く歯車であっても、その瞬間に店を回しているのは自分たちであってそれは小さな力だとしても社会を動かしているんだという感覚は少しだけあった。

 

 結局その感覚は僕の原動力にならなかったけど、主人公は見事にそれをエネルギーに変えていて「この人すごいな...」と尊敬した。なんていうか本当にピュアだなあと思う。

 

自分とは周囲の掛け合わせの存在

「今の私をつくっているのはほとんど私のそばにいる人たちだ。」

という主人公の考え方、たしかにその通りだな〜と思った。

 

人と人は互いに伝染しあって影響を受け合っている。赤ちゃんの頃は「水」みたいなもので、生きていくうちにいろんな要素が足されて個性が出てくる。

音楽雑誌なんかで好きなアーティストさんのインタビューを読むと、結構同じようなことを言っていたのを思い出した。なにかを作ることにおいてもこの主人公の考え方に繋がるんだ。

 

しかしそんな面白い考えをもっているのにも関わらず、「もっといろんな人間を摂取しよう!」とコンビニ生活から抜け出さないあたり、本物のコンビニ人間だなと思った。

 

 

婚活のためにコンビニに来た男、白羽

ふつう結婚相手をコンビニ店員から選ぶために自分もコンビニでバイトするってありえない話だよね...後半にこのキチガイ男が導入されてから物語がいっきに加速する。

 

でもこの白羽、根っからのキチガイじゃなくてときたま正しいと思うことも言うから目が離せない。なんていうかこういう、たまに良いこと言う変人ってもったいないなあと思う。社会の渦が大きすぎて埋もれてしまい、運良く存在が発見されても第一印象から相手にされない、そんな白羽はこの先どこに向かうのかと心配になった。

 

主人公との掛け合いが印象的で独特な考えの2人による口論から、作者のハイレベルな人間観察力がちらついた。

 

 

コンビニ人間は底辺じゃない

生真面目で同調性に長けていて、とくにやりたいことが見つかっていないと仕事に洗脳されやすくなる。 

僕もコンビニで嫌気がさす前は出勤の時間になるとどこか安心していた。

今からやるべき仕事があって、それは決まっているものできちんとこなしていくだけ、とくに考えなくていい。正直言ってそれが楽ちんだった。

 

そういう生き方が悪いわけではないし、経営者にしてみたらありがたい人材なんだろうけど...

 

「なんで時給900円でそこまで頑張るの?」「客のいない店内で声出しして何になる?」「昇給もしないのにどうしてチキンを完売させることにこだわるの?」

 

いろんなことを疑問に思った瞬間、一気にコンビニから抜け出したくなった。

 

「コンビニ人間やば...」ってなめてたけど、仕事に意味もアイディンティティも見出さないままいやいやと続けていた僕はコンビニ人間以下だった...

 

作者もコンビニ店員?! 関連書籍も。

作者は今もコンビニでバイトしているらしい。最近知ったけど有名なことだった。

コンビニ人間は綿密な取材から生まれたものだと思っていた。小説家ならお金もあるだろうしコンビニでバイトをしてるなんてまさかだ...

 

人間観察力はそのコンビニで鍛えているらしい、空想が好きな作者だし、お客さんの顔を見るだけでその人の人生とか想像できちゃいそうだなぁ

 

どこのコンビニかは非公開らしい(そりゃそうだよね)けど実際にコンビニにいてもわからなさそう笑

 

作者のコンビニ愛はこちらの短編から垣間見ることができます ↓

kindle版で無料配布!)

 

 いやあ...世の中にコンビニをここまで尊く思う人がいるんだなあ...

 

 

おわりに

ある意味おそろしい人種のエピソードが詰まった面白い本でした。

コンビニあるあるネタもたくさん書いてあるのでコンビニ経験者は読むと「それな!」を連発します。

芥川賞の作品はじめて読んだけど意外と敷居が低くて驚きました。

 

2016/11/23